【書類名】      意見書
【整理番号】     YZK-6038
【提出日】      平成19年 4月20日
【あて先】      特許庁審査官 須田 裕一 殿
【事件の表示】
  【出願番号】   特願2003- 14448
【特許出願人】
  【識別番号】   000006895
  【氏名又は名称】 矢崎総業株式会社
【特許出願人】
  【識別番号】   000003207
  【氏名又は名称】 トヨタ自動車株式会社
【代理人】
  【識別番号】   100083806
  【弁理士】
  【氏名又は名称】 三好 秀和
  【電話番号】   03-3504-3075
【発送番号】     069169
【意見の内容】
 審査官殿がご提示された拒絶理由通知(発送日平成19年2月20日)に対し、本出願
人は次の通り意見を申し述べます。
 審査官殿は、拒絶理由1によって本願請求項1に対して、引用文献1(特開2002−
134078号公報)と引用文献2(特開2001−93501号公報)を引用されて、
特許法29条第2項の規定により本願発明を拒絶されました。
 本願発明の要旨とするところは、今回補正した特許請求の範囲に記載したとおりであっ
て、請求項1の発明にあっては以下の構成要件を備えています。
A.電極体を収納する電槽の上面開口を塞ぐ蓋の両側に極柱を固定するとともに、前記蓋
の中央にガス放出部を備えた充放電が可能な二次電池と、
B.挿入口を具備し、この挿入口を通じて該二次電池が収納される収納部を備えたケース
と、該挿入口を塞ぐホルダを備えた密閉型二次電池であって、
C.前記ホルダの前記収納部と対向する面に、前記ガス放出部及び前記二次電池の両側の
極柱の周囲を囲み、且つ先端部が前記ガス放出部に向かって倒れるように付勢保持される
弾性材からなる密閉リブと、
D.前記密閉リブの内側に、前記ガス放出部を包囲して立設される補助リブと、が形成さ
れたゴムパッキンを備えたことを特徴とする密閉型二次電池。
 
したがって、本願請求項1の発明によれば、前記A〜Dの構成により、
 a.ガス放出部の及び極柱の周囲を先端がガス漏出部に向けて倒れるように付勢保持さ
れた密閉リブによって密閉したことにより、ガス放出部から放出されたガスが所定の空間
から外部に漏れ出すことを防止することができる。
b.また、密閉リブの内側において、ガス放出部が補助リブによって密閉されることによ
り、ガス放出部から放出されたガスが所定の空間から外部に漏れ出すことをさらに確実に
防止することができる。
という本願発明特有の効果を奏することができるものであります。
 
このような本願発明に対して審査官殿がご指摘された引用文献1には、安全弁(ガス放出
部)の周囲に排気流路を形成するシール部材(防水部材)を配置し、安全弁からのガスを
排気流路を通じて排出する構成は開示されておりますが、電極を含んだ排気流路の周囲を
さらにシールし、すなわち二重のシールを行う点、及び外側のシール部の先端部が前記ガ
ス放出部に向かって倒れるように付勢保持される弾性材からなることの開示も示唆もされ
ていません。
すなわち、引用文献1には本願請求項1の発明における構成要件のCが欠落していて、本
願請求項1の発明とは構成が全く相違しており、aの作用効果が得られないことは明確で
あります。
また、審査官殿は、引用文献2に記載の先端部に二重のリップを設けることにより密閉性
を高めることは周知技術である、とされておりますが、引用文献2は電槽上面と固定座金
の間から滲み出た電解液が漏出するのを防止する構造であり、本願の如くガス漏出防止を
目的とするものとは相違し、引用文献1のガス漏出防止技術に引用文献2の電解液漏出防
止構造を適用して本願構成を想到することは困難と考えます。さらに、引用文献2のリッ
プは電槽上面と固定座金の間から、すなわち漏出部から離間する方向に向かって倒れてお
ります。すなわち、仮に引用文献1に引用文献2のリップ構造を適用できたとしても、ガ
スの圧力が上昇してリップの下方向の圧力が高まることでリップの先端が浮き上がること
となり、ガス漏出防止という本願の効果を果たすことはできません。
それに対し、本願の密閉リブはガス漏出部へ向けて倒れるように付勢保持されているので
、ガスの圧力が上昇してリップ上方向の圧力が高まることでさらにリップの先端が当接面
に押し付けられ、シール性をさらに向上させることが出来ます。
すなわち、引用文献2には本願請求項1の発明における構成要件のCが欠落しており、a
の作用効果が得られないことは明白であります。
したがって、本願請求項1の発明は、当該引用文献1、2の発明を組み合わせても本願請
求項1の発明における構成要件のCが欠落していて、本願請求項1の発明とは構成が全く
相違しており、aの作用効果が得られないことは明白であり、これら引用文献1,2から
本願発明を想到することはできないと本出願人は思料します。
なお、本願発明の新たな請求項1は、出願当初の段落番号【0016】、【0024】及
び【図6】の記述に基づき、密閉型二次電池の構造、ガス放出部の位置などを明確にした
ものであり、新規事項の追加には当らないとともに、特許法36条第6項第2号の規定に
よる本願請求項1に対する拒絶理由2は解消されたと思料します。
また、本願請求項2の発明は、段落番号【0016】、【0027】および図3、図6の
記述に基づき、新たに請求項1の発明の構成を限定したものでありますから、新規事項の
追加には当らないとともに、
c.リップによって付勢保持されつつ、前記密閉リブと前記リップとの間に前記電槽と前
記蓋との溶接部が位置することにより、溶接部から二次電池内部で発生したガスが漏出し
た場合にガスが薄肉部に向かって流れるので、ガスを所定の空間内に留め、ガスが外部に
漏れ出すことをより一層防止することができる。
という本願発明特有の効果を奏することができるものであります。
したがって、請求項2の発明にあっても前記引用文献1,2とは無関係と言えます。
さらに、図4の補正について、請求項1の構成要素である補助リブの位置が明確になるよ
うに符号19fを追加したものであり、新規事項の追加には当らないと思料します。
 
以上の理由により、何卒ご再審の上、速やかに特許査定賜りますようお願いする次第であ
ります。